魔法世界−ファントムシティ−
誰か、と言うのは誰なのか…なんて、考えなくてもわかる事で。
何故なら、この学園に来て、俺が名を名乗ったのは一人しかいないから。
「ティア…」
俺はワープパネルへと進めていた足を止め、後ろを振り返る。
そこには、軽く息を弾ませているティアがいた。
ティアはにっこりと微笑み、俺に歩み寄る。
「ライト、寮の、自室、の鍵と…っ場所、を…確認、したら、好きにしていいっ…て…」
かなり息が上がっている所を見ると、相当急いで来たらしい。
肩で息をして……は、いないが、白い頬が紅潮して、ほんのりと桃色になっていた。
「……」
「…って、フィル先生が」
「……フィル?」
「ライト、聞いてなかったの?先生の名前」
俺が首を傾げると、ティアも同じように首を傾げて聞く。
あぁ……、
あの長髪の男性教員か。
フィル、ね……。
覚える気も無いが、何となく、心の中でその名前を繰り返す。
「…で?ティアはその報告をしにわざわざここに?」
俺はふぅ…と息をつき、ロビーの白いソファーに腰をおろす。
ティアも小走りでついて来て、俺の真正面に座った。
「う〜ん……報告、って言うのもあるけど…。正しくは違うかな」
「…?」
「ライトと一緒に学園探索でも♪と思って」
「……」
学園、探索……?
突然黙り込む俺。
ティアはそんな俺を不思議そうな表情で見つめている。