春夏秋冬〜Side〜

Side寿人





人には誰だって、秘密があるものだ。

心のなかに、誰にも話せない、いや、話したくない秘密が。

きっとその秘密は、口にだせば、春に降るなごり雪のように儚く消えていく。

口にした時点で、秘密は秘密ではなくなる。

そして心の中には、さっきまで居座っていた秘密の空間がぽっかりと空洞になって、そして、俺は俺でなくなるんだろう。


――――人魚を見た事がある。

それが俺の、誰にも話せない秘密だ。
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