罪過
何度も何度も、重ねる罪。


ときおり、あたしは眠るショウゴを置いていなくなる。



黄色のレインコートを着て、小花柄のレインブーツを履いて、街へ出ていく。


行く場所は決まっていない。




雨が降って、地面が濡れて、アスファルトから匂いが漂う。



煙に似た匂い。



両親が煙に消えたときの匂い。



罪を忘れないための匂い。



そして、お兄ちゃんと離れることができない匂い。



あてもなく歩いて疲れると、あたしは近くのお店の軒下に行って、しゃがみ込んだ。



黒い地面に落ちる雨粒。


漂う雨の匂いに、あたしは目をつむる。



……ごめんなさい。



謝りたくても、謝りたい人達はもうここにはいない。


それでも、あたしは雨が降るたび、いない人達に向かって謝った。


謝っても、逃れることができない罪。だけど、それでもいい。


あたしには、お兄ちゃんしか……ショウゴしかいないから……


コツコツと足音近づいてきて、音があたしの前でとまった。



ああ、来てくれた。


顔を上げると、傘を差したショウゴが立っていた。


「迎えに来たよ」

差し出された手に、あたしは手を伸ばした。




【完】


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