ならばお好きにするがいい。
 
ガキの頃、大きな祭りが終わると、よく言い様の無いもの寂しさを感じたものだった。大人になってからは、そんなもんすっかり忘れていたが、今、あの時と同じようなもの寂しさを感じている。


楽しいことが終わるとやって来るこの虚無感。つまり、俺は体育祭を楽しんでいたということになる。


……不本意だが、事実だ。


体育祭も無事終了して、日も落ちかけた放課後、俺は結城と二人きりで教室の窓際の席に腰かけていた。


戦利品のアイス券で買ったアイスを舐めながら、黙って窓の外を眺める結城の横顔をチラッと盗み見る。


……どこ見てんだ?


結城の見ている方と同じ方向に視線を向けたら、不思議な色をした空が、どこまでも広がっていた。


西の方は、燃えるようなオレンジ色で、あの放課後の夕焼けを思い出させた。クラス全員で、砂まみれになりながら、ボールを投げ合った放課後。


東の方は、星のちらつく濃藍色で、最近の夜を思い出させた。仕事を終えて帰宅すると、ここ最近はずっとドッジボールについて考えていた。どうしたら勝てるかとか、なら明日はどんな練習をするかとか、そんなことばっかり考えていたなと今思う。


そして中間は鮮やかな水色で、今日の昼間の青空を思い出させた。抜けるような青空の下、あんなに純粋にドッジボールを楽しんだのは、一体何十年ぶりだろうか。


空を見上げてこんなに感慨に浸るなんて生まれて初めてだ。


それもこれも、全部お前のおかげだよ……結城。



< 107 / 167 >

この作品をシェア

pagetop