ならばお好きにするがいい。
俺が教師になった理由は、子供が好きだとか、子供たちの未来に貢献したいだとか、子供たちに教えたいことがあるだとか、そんな大層な理由じゃない。
正直、安定した職につきたかったからってだけで教師の道を選んだ。
幸い、ちょっとばかり人より数学ができたことと、この真面目にみられる寡黙な性格のおかげで、うまいこと教師になれてしまった。教師になりたくてもなれない人には大変申し訳ないと思う。
まぁ、なっちまったもんはなっちまったんだ。それなりに給料も貰うわけだから、ある程度は責任持ってやらなきゃいけねぇ。だから最低限、やることはやろうと思った。
分かりやすい授業は心掛けているし、進路のことで相談があるという生徒がいれば、ちゃんと話を聞いている。教師としての仕事は、果たしているつもりだった。
これが正しい、そう思っていた。
教師と生徒は必要以上に関わり合うもんじゃねぇ。イジメなんかが良い例だ。イジメられた奴が教師にチクれば、チクった奴は更にイジメられて、状況は更に悪化する。生徒間の関係に教師が首を突っ込めば、面倒事はますます面倒になる。そんなもんだ。
俺は面倒事が嫌いだ。
そんな面倒に立ち向かっていくほど、俺は熱いセンセイじゃない。
そんな俺を、結城は怒った。
「先生はどうして先生になったの?」 その問いに答えられなかった俺を思いっきり睨み付けて、そんな小さい体のどこから出るのかと訊きたくなるようなデカい声で、「馬鹿!」と。