ならばお好きにするがいい。
 
お前の方が馬鹿じゃねーか馬鹿、と。馬鹿に馬鹿と言われたことにあの時はしばらく腹を立てていたが、今振り返れば、やっぱり俺が馬鹿だったのかもしれないと思う。


……楽しかったんだ、体育祭が。


認めたかねーが、生徒に囲まれたり、笑いかけられたりするのが……嬉しいと、思ってしまった。


そういえば今まで、生徒と笑い合う樫芝を見ては、「馬鹿じゃねーの?」って思ってた。


生徒との正しい距離感がどうだとか、変な御託を並べていたのは、ただ単に樫芝のことが羨ましかったのかもしれない。生徒に慕われるアイツに対抗するための言い訳が欲しかったんだ、俺は。


俺は昔から内向的な性格だった。だからあまり人当たりは良くなかった。それは大人になってからも変わらず、むしろ悪化して、周りからは取っ付きにくい人間だと思われるようになった。


そしていつしか、『あの怖い先生』 それが俺の代名詞になっていた。


それならそれでいいと、気にしないふりをしていた。


でも、本当は心のどこかでひっかかるものがあったのかもしれない。




< 109 / 167 >

この作品をシェア

pagetop