ならばお好きにするがいい。
俺の口から出た素直な謝礼の言葉が相当衝撃的だったのか、豆鉄砲食らった鳩みたいな顔をしている結城。
「それ、一口よこせ」
結城の手に握られているソフトクリームを指差せば、間抜けな顔は更に間抜けになる。
「え……でも先生甘いの嫌いなんじゃ……」
「一口くらいは平気なんだよ」
「でも……」
言い訳を紡ぐ結城の言葉を無視して、ソフトクリームを持っている小さな手に自分の手を重ねた。
ソフトクリームごと、その手を自分の口元に引き寄せて、結城が舐めて崩れた部分に唇を寄せた。
自分でもなんでこんなことしたのか分かんねぇ。分かんねぇけど……コイツがあんまり美味そうに食ってるもんだから、俺も食いたくなったんだと思う。……多分。
「先生……」
「ん」
「……間接キス」
……やっぱりそうなっちまうのか。
耳まで真っ赤にした結城に自分の行為をカミングアウトされて、急に気恥ずかしさが込み上げてきた。
俺、なんつーことをしてんだ……!
「いちいち言わんでいい」
少しだけ熱くなった顔を冷ましたくて、結城の手元にあったカップに手を延ばして、冷たく甘ったるい塊を無理矢理口に詰め込んだ。
「先生ほんとは甘いの食べれるでしょ!」
「食えねーよ。大嫌いだよこんなもん」
嫌いだ。
大嫌いだ。
絶叫マシンと甘いもんは昔から大嫌いだ。
でも……。
胴上げとアイスは、割と嫌いじゃねぇかもな。