ならばお好きにするがいい。
先生、お礼はいりません。
逆家庭訪問
ミーンミンミンミンミーン……。
耳をつん裂くようなセミの声。
「みーんみんみんみんみーん……」
8月某日、お日様がカンカン照り付ける昼下がり、私は公園のベンチに座っていた。
「みーんみんみんみんみーんみんみんみんみーんな旅行だとか合宿だとか行っちゃってさー私はひとりぼっちだよー寂しいよーバカヤロー……」
夏休みの真っ只中、私は暇を持て余していた。友達はみんな用事があって遊んでくれず、授業もないから小田切先生にだって会えない。
「生き地獄とはまさにこのことである」
鳴り止まない下手くそなセミたちの合唱を聴きながら、ベンチにもたれて携帯を開いた。
パッと明るくなった携帯の画面。究極の笑顔を浮かべている私と、いつも通りの仏頂面をした先生が、画面越しにこっちを見ている。
「体育祭、楽しかったなあ……」
夏休みに入ってからは、この待ち受け画面を見る度に寂しくなる。
先生に会いたくなる。
「小田切せんせ……元気かなぁ……」
「それが元気じゃないんだよねー」