ならばお好きにするがいい。
「なんでだよ……」
がくーっと肩を落とした小田切先生の顔は真っ赤だった。前髪がうっすら汗に濡れている。
「オイ樫芝……俺は元気が出るもん持ってこいって頼んだんだぜ?」
「うん?」
「なのに逆に体力消耗しそうなもん連れてきやがって何を考えてんだあああああああああ!」
「小田切先生っ、落ち着いて落ち着いて!」
「うるせえぇぇええ!落ち着けない原因に落ち着いてとか言われたくねぇんだよ!」
暴れる小田切先生を「まぁまぁ」と諭しながら、樫芝先生はあたかも自分の家に入るかのように自然な動作で小田切先生の家の中に入っていく。そして私もそれに続く。
「オイ、コラ!なに勝手に人んち入ってんだテメェら!」
「うるせーな。お見舞いきてやったんだからお茶くらい出しなさいよ」
「私ジュースがいい」
小田切先生はこめかみに青筋を浮かべつつ、キッチンの方に消えていった。
「潜入成功だね」
樫芝先生がニコッと笑って私を見た。
たまにこの人が本当に教師なのか疑いたくなる時があるけど、でも樫芝先生のそんなところが好き。
「樫芝先生、今さらだけど、私来て良かったのかな……?」
「本当に今さらだね。大丈夫大丈夫。雅人が莉華にエッチなことしなければセーフだよ」
樫芝先生と二人でケラケラ笑っていたところに、二つのグラスを持った小田切先生が戻ってきた。
「お、悪いね」
無言のまま、お茶の入ったグラスを樫芝先生に、リンゴジュースの入ったグラスを私に渡すと、小田切先生はドカッとソファーに座った。
「……で?」
ギロリ、小田切先生の鋭い眼光が私と樫芝先生を捉える。
小田切先生に睨まれるの、何日ぶりだろう。
きゅんと高鳴る胸を押さえて、小田切先生を見つめ返すと、小田切先生の顔が苦笑に歪んだ。