ならばお好きにするがいい。
 
好きなことをしてる時間は、あっという間に過ぎるもの。


「あ、起きちゃった」

「何してんだ……お前……」


先生の寝顔に見とれていたら、気付けば4時間近く経っていた。


目を覚ました小田切先生は、虚ろな目をしたまま、ベッドに寄りかかっていた私に視線を落とすと、しばらく何かを考え込んで、それからゆっくり上半身を起こした。


「……樫芝はどうした」

「帰りました」

「お前を残してか?」

「うん」

「うんじゃねぇよ。お前も一緒に帰れよ。なんで残ってんだよお前」

「だって二人とも帰っちゃったら誰が先生のこと看病するんですか?」


私が水の入ったペットボトルを渡すと、先生は苦笑しながらそれを受け取って一口飲んだ。


「あー……なんだ、そうか……まぁ、うん、そうだな……わ、悪かったな、迷惑かけちまって。本当にどうもありがとうございました。では、お気をつけてお帰りください」

「は?」

「……は?ってなんだよ」

「何言ってるの先生、帰らないよ私」

「いや、お前が何を言ってるんだ。帰れよ」

「帰らない」

「帰れ」

「帰らない!」

「帰れ!」

「帰らないっ!先生が元気になるまで絶対絶対ぜ───────ったい帰らないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「はああぁぁ────!?もう元気だから安心してとっとと帰りやがれ糞ガ……キ」


ガクンと力が抜けたように、先生の体が再びベッドに沈んだ。




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