ならばお好きにするがいい。
 
「……帰るぞ」


先生は私の肩に優しく手を置いて、そっと体を離した。


「家族に心配はかけちゃいけねぇ。いいな?」


心配……?


「ほら、さっさと連絡……」

「連絡、したって……」

「?」

「連絡したって、家に……誰もいないもん……」



いないの、誰も。


家には誰もいない。


だから連絡したって、意味ないんだ。


心配かけるなって言われても、心配かける相手がいないんだよ……。



「結城……なんで、泣いてんだよ……」

「……泣いてないもん」

「泣いてるだろ」

「泣いてない」

「泣いてる」

「泣いてないっ!もう慣れたの!寂しくなんか……ないっ……」





< 129 / 167 >

この作品をシェア

pagetop