ならばお好きにするがいい。
「アンタ今度はなにしてんのー?」
私のただならぬ様子に気付いたのか、聡未が怪訝な顔をして近づいてきた。
「あっ、聡未ちょうどいいところに!ここ分かんない!教えて!」
「んー……?って何これ、数学じゃん!」
「そだよ!」
「莉華一体どうしたの!?アンタが数学勉強するなんて……!明日は雪……いや、隕石でも降ってくるんじゃ……」
「私だってやりたくてやってるんじゃないやい!でも60点以下だと口きいてもらえなくなるんだよ!だから15倍勉強するの!補習は他の先生だしね!」
「何の話なのかサッパリ理解出来ないんだけど」
改めてこれまでの経緯を話すと、聡未はケラケラと笑った。
「笑い事じゃないよ!」
「あーハイハイごめんごめん。いやー……でも小田切先生うまいな」
「何が?」
「バカの扱い方」
バキッ……。
そう言って笑った聡未にデコピンを食らわす。
……が、不発。
音を立てたのは聡未のおでこではなく、私の指だった。
「痛ああああああああ!」
「本当にバカじゃないのアンタ……。自滅してどーすんのよ」
「力込めすぎた!やばい!やばいこれ外れた!これ絶対関節外れた!バキッていったもん!痛い!」
ズキズキと痛む私の中指を優しく撫でながら、聡未はお馴染みの呆れ顔でふー……っと長い息を吐いた。
「もーっ!聡未のばか!教える気ないならあっちいけ!」
「ハイハイごーめんて。教える教える。でも……その前に1つだけ言いたいことあるんだけどいい?」
「なに?」
「今アンタが必死に解いてるそのページ、次の小テストの範囲に入ってないよ?」
「え……ええぇえぇええぇえぇっ!!!!!!?」
「いや、ええぇえぇじゃなくて。範囲くらい確認してから勉強しろよ」