ならばお好きにするがいい。
 
話すつもりなんてなかった。話すつもりなんて、これっぽっちもなかったのに、私は話していた。先生の腕の中で、泣きながら、私は全てを吐き出していた。



私の家は、もともと4人家族だった。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、私の4人家族。それなりに幸せな家族だった。


その幸せが音を立てて崩れ始めたのは、私が小学2年生の時、お父さんが浮気をしたのがきっかけだった。


あの浮気が発覚した数日後、学校から帰宅した私は、天井から延びているカーテンにぶら下がっているお母さんを発見した。


お母さんは首を吊って自殺した。


それから、お父さんはその浮気相手と再婚。当然新しいお母さんは私とお姉ちゃんのことを良く思うはずもなく、たくさん酷い仕打ちをされた。蹴る殴るは当たり前、1週間ごはんを食べさせてもらえないこともあった。


毎日死のうと思ってた。死んで、お母さんのところへいきたいと毎日願っていた。


そんな私を闇から救い出してくれたのは、お姉ちゃんだった。


小さい頃からピアノの天才だと言われていたお姉ちゃんは、高校卒業と同時に、奨学生で音楽大学への進学が決まっていた。でも、お姉ちゃんはそれを断った。ずっと夢だと言っていた進学を諦めて、お姉ちゃんは音楽とは何の関わりもない普通の会社に就職した。


私をあの人から引き離すために、私を護るために、お姉ちゃんは夢を諦めたんだ。


お姉ちゃんは就職してすぐに自分でアパートを借りて、そこに私を呼んでくれた。


あの日から、私はお姉ちゃんと2人暮らしをしている。


でも、お姉ちゃんは家に帰ってこないことの方が多い。何をしているのかは知らない。


だから私は、家に帰っても1人ぼっち。実質1人暮らししていることと変わらないんだ……。






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