ならばお好きにするがいい。
思わず耳を疑った。
振り返ると、すぐ目の前に先生が立っていて。私を見下ろした先生は、大きく硬い親指で、私のほっぺを流れる涙を優しく拭ってくれた。
親指に擦られた部分が、火傷したみたいに熱い。
「具合が悪いんだよ」
「へ……?」
「具合悪くて死にそうだっつってんだよ。ここまできたなら俺が治るまで泊まり込みで看病しやがれ」
先生はそう言ってため息をつくと、ベッドの横のタンスから適当に服を引っ張り出して、私に押し付けるように渡した。
「風呂はトイレの横。タオルは風呂場の棚にあるやつ適当に使え」
「お風呂……?」
「そう言ってんだろーが。自分で沸かしてさっさと入ってこい、汗臭ェんだよ」
「うんっ……!」
「その鼻水でぐちゃぐちゃな顔もしっかり洗ってこいよ」
先生は、優しい。
借りた着替えを抱えたままお風呂場に向かって、それから水道の蛇口を捻った。勢い良く落ちるお湯が、もくもくと湿った煙を上げながら、浴槽を満たしていく様子を見つめていたら、私の目は、また涙を流していた。