ならばお好きにするがいい。
 
寝室に戻ってドアを開けた瞬間、目の前の光景に思わずうろたえた。


「先生!?何してるの!?」

「何って……」


だって、ベッドの上に座っている先生が、なぜか裸だったから。


かろうじて下のスウェットは履いたままだったけど、Tシャツは床に脱ぎ捨てられていて……。生まれてこのかた彼氏というものがいたことのない私には、十分刺激的すぎる光景だった。


こ……これってまさか……!


少女漫画や恋愛ドラマでお馴染みの『先に風呂入ってこいよ……』ってやつだったのでしょうか……!?


ということは、次に待っているのは……。


樫芝先生のあの妖しい笑みが脳裏に蘇る。



──……「熱が上がるようなことはしないようにね」



ドキン、と心臓が弾けた。


「せせせせせせ……先生っ!」

「なんだようっせーな」

「せっ……先生となら本望なのですが!しかし今回は状況が状況と言いましょうか、まずはあなた様の体調のご回復を第一としなければならないと思いますので、今夜は見送りの方向でよろしくお願いいたします!逃げではありません!初めてだから怖いとか全然そういうんじゃありません!」

「……何をアホな方向に勘違いしてんだ、テメェは?」


先生は苦笑しながら、手に持っていたタオルを肩にかけた。


「体拭いてただけだよ。風呂は入れねーからな」


そう言いながら、首筋をタオルで拭う先生を見て、へろへろと体から力が抜けた。


良かった……いや、残念だったような気もするけど……やっぱり良かった……。そういうのはやっぱりまだ早いというか、心の準備がまだ出来ていないというか……。





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