ならばお好きにするがいい。
着替えを終えた先生は、クローゼットから薄いシーツを1枚取り出すと、それを脇に抱えた。
「お前はそこで寝ろ」
先生はさっきまで自分が寝ていたベッドを指差すと、私に寝るように促した。
「へ……?じゃあ先生はどこで……」
「俺はリビングで寝る」
「な……何言ってるんですか!だめですよそんなの!先生は病人なんだから大人しくベッドで寝てください!私がリビングで寝ます!」
「下手な気ィ回さなくていいんだよ糞ガキ!黙ってそこで寝てろ!」
「いいから先生はベッドに寝てください!私もベッドに寝ますから!」
「あぁ、そうだな。俺もお前もベッドに……って、はぁ!?」
先生に抱えられていたシーツがバサッと床に落ちる。
「何を驚いているんですか先生。片方がリビングで寝るのがダメなら二人ともベッドで寝ればいいと、至極真っ当な提案をしただけですよ私は」
「どこが真っ当なんですか。思いっきり論外な提案だろーが」
先生は床に落としたシーツを拾い上げて、目で私にベッドに入るように促す。
「いいからホラ、さっさと寝ろ」
「やだ」
「怒るぞ」
「いつも怒られてるから今さら怒られても怖くないです」
頑なにベッドに入ろうとしない私と先生。ベッドの前で黙って睨み合うこと数分、先に口を開いたのは先生だった。
「一緒に寝るっつったって……俺、風邪引いてんだよ。移っちまうだろーが」
「気にしないで下さい、そんなの。それより先生の風邪が悪化する方がよっぽど心配です」
「んなこと言ったって……」
「それに、先生知らないんですか?バカって風邪引かないんですよ。だから大丈夫、移りません」
そう真剣な顔で答えたら、先生がぷっと小さく吹き出した。
「……それもそうだな」
先生はするりとベッドに入ると、少しだけ端に寄って、空いたスペースをぽんぽんと叩いた。
「来いよ」