ならばお好きにするがいい。
 
自分から提案したのに、いざそうなると、心臓が壊れそうなくらいに激しく弾み始めた。


「電気、消せ」


言われた通り部屋の電気を消すと、窓の隙間から射し込む月明かりだけがぼんやりと部屋を照らす。


先生の薄暗い影が、ベッドの上で私を手招きした。


ゆっくりとベッドに潜り込むと、先生は私の頭の下に腕を差し込んだ。


「腕枕……?」

「……嫌か?」

「ううん、嬉しい」


息を吸い込む度、先生の甘い匂いがして、私まで熱が出たみたいに頭がぽーっとする。


「先生、具合は?」

「あぁ……だいぶ良くなった」



それからしばらく、他愛のない話をした。こないだの体育祭の話、数学の話、私の絵の話、樫芝先生の話、スズメバチの話、食べれる雑草の話、ジブリの名作はやっぱりラピュタだとか、ハイジのブランコは空から出ているだとか、そのブランコの時速は推定68kmだとか、そんなの乗ったら体ふっ飛んじゃうよねとか、ハイジの握力ハンパねぇとか……。本当に他愛のないくだらない話。でも、そんな話をするのがどうしようもなく楽しくて。時間が止まればいいのにって思った。





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