ならばお好きにするがいい。
 
「そろそろ眠いんだろ。寝ろよ」


私が小さくあくびをしたのに気付くと、先生は優しく布団をかけ直してくれた。


「せんせ」

「なんだ?トイレか?」

「……今日、ごめんね」


暗い天井を見上げながら、自然とぽつりとこぼれた言葉。


「……先生のこと元気にしにきたはずなのに、逆に元気にしてもらっちゃった」


怒られるのを覚悟で、先生の胸に潜り込んだ。どうせすぐに「コラ、離れろ」って引き剥がされる。


でも、先生は怒るどころか、もっとこっちに来いと言わんばかりに、私の体を優しく引き寄せた。


その先生の意外な行動に、息が止まりそうになる。


「せん……せ?」

「なんだよ。お前からくっついてきたんだろーが」

「そ……だけど……」

「じゃあ、いいだろ」


先生の胸に寄せたほっぺは、心臓が移動したかのように熱くなった。


クーラーが風を送る静かな音だけが響く部屋では、先生の心臓の鼓動がとても大きく聞こえて。それに自分の鼓動を重ねたら、どうしようもなく涙腺が緩んだ。


「……なんだ、また泣いてんのか?」

「う……」

「今度はどうしたんだ」

「……嬉しくて」

「?」

「こんな風に、誰かの隣で寝たの、小学生の時……お母さんの隣以来だから……」




 
< 138 / 167 >

この作品をシェア

pagetop