ならばお好きにするがいい。
先生の大きな手が、私の頭を優しく撫でてくれた。それだけで十分だったのに、先生はどこまでも優しかった。
「……寂しい時は、俺んとこに来い」
そんなこと言われたら、涙が止まらなくなる。先生のこと、もっともっと好きになる、苦しくなる。
「さっきお前、自分を心配してくれる奴なんて1人もいねぇって言ってたよな?」
「?うん……?」
「それ、撤回しろ」
「え……?」
「ここにいるんだよ、お前のこと馬鹿みたいに心配してる奴が」
その言葉を、先生がどんな顔をして言ってくれたのかは分からない。でも、その言葉を紡いだ声は、今まで聞いたことがないくらいに優しい声だった。
「なぁ、結城……」
「はい」
「今日のこと、周りにベラベラ広言するんじゃねーぞ……」
「分かってます。私だってそこまで馬鹿じゃないよ、せんせ」
「……そうか」
私だって薄々気付く。今のこの状況は、普通の先生と生徒の関係じゃありえない。先生の家に生徒が泊まって、更に同じ布団で寝たなんて知られたら、きっと大問題になる。
先生は私に対して恋愛感情なんてないかもしれない。今だって、仔犬預かりました程度にしか思ってないかもしれないけど。でも、私は先生が好きで。
私のわがままで、危ない関係に巻き込んでしまっていると思うと、先生に対して申し訳無い気持ちでいっぱいになる。
「先生、ごめんね」
「……今さら遅ェよ、バカ」