ならばお好きにするがいい。
先生の肌を、すぐ側に感じる。
風邪のせいか少し荒くて熱っぽい息が、首にかかってくすぐったい。
「結城……寝たのか?」
寝てない。
寝てないけど、寝たふりをした。
声を出すのが困難になるほど、胸がいっぱいになっていた。ドロドロに溶かした高熱の鉄を流し込まれたみたいに、胸が熱くて、苦しくて。
お母さんが死んでしまったあの日から、ぽっかりと空いてしまった心の隙間。その隙間が、埋まった気がした。
……ううん、埋まるどころか、収まらなくて溢れ出してるみたい。
先生の優しさが、私の心をいっぱいにしていく。苦しい、苦しい。
「結城……」
私が返事をしないのを確認したと同時に、遠慮がちに私を包んでいた腕が、ぐっと力強くなった。
突然強く抱き締められて、心臓が飛び出そうになった。きつく抱き締められた体と一緒に、心臓もぎゅうっと締め付けられる。
「……お前は独りじゃねぇよ」
低くて掠れた声を耳元に注がれて、どくんどくんと心臓の鼓動が速まる。
「俺が、側にいてやる」