ならばお好きにするがいい。
 
一瞬、時間が止まった。


おでこに感じた、柔らかい熱。それが先生の唇だってことは、目を瞑っていても分かった。


私のおでこを掠めた唇は、優しい熱を残してゆっくりと離れた。


唇が触れた部分がじん、と熱くて、そこからじわりじわり、全身に熱が広がっていく。



なん、で。


先生、なんで。


なんで、キス……?



どく、どく。破裂しそうな勢いで脈打つ心臓。激しく混乱する頭の中。


間も無く、頭の上から規則正しい寝息が聞こえてきて、私は薄目で先生を見上げた。



「せんせ……」



厚い胸にしがみついて、再び目を閉じる。


どんどん遠退いていく意識の中、先生が寝言で私の名前を呼んだのを聞いた。


嬉しさに胸を震わせたまま、私は深い眠りの底へ沈んでいった。





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