ならばお好きにするがいい。
夏の匂い
それから3日間、遠慮する先生を押しきり、私は泊まり込みで先生の看病をした。
先生に元気になってもらいたいという気持ちと、先生の側にいたいという気持ちが相まって、私は一生懸命誠心誠意、先生の看病に当たった。
その甲斐もあって、4日目の朝には、先生の風邪はすっかり良くなっていた。
「おぅ」
私が朝食の支度をしていると、寝癖で髪を逆立てた先生が、寝間着姿のままでリビングに入ってきた。
「先生おはよ!具合は?」
「ん……治ったと思う」
体温計を脇に挟んでソファーに腰掛けた先生の前に、作りたてのオムレツを置いた。
「……今日もうまそうだな」
「私が?」
「お前の料理が」
すかさず反論しようと口を開いた瞬間、それを遮るように、ピピ、と体温計が鳴った。
先生は脇から体温計を抜き取ると、小さなディスプレイに目を落とした。そして、小さく安堵のため息をつくと、体温計を私に手渡した。
35.8度。体温計が示していた数値は、紛れもない平熱だった。
「おかげさまで治ったみてぇだ」
オムレツの他に、パン、コーンスープ、サラダ、ベーコンのソテー、フルーツにヨーグルトが並んだ鮮やかなテーブルを見渡すと、先生は眩しそうに目を細めた。
「先生!ほらほらっ、ぼーっとしてないで!冷めないうちに食べて下さい!」
私に促された先生は、箸でオムレツを一口大に切って口に運んだ。
「ん、うまい」
先生が照れ臭そうにそう呟いたのを確認してから、私も先生の隣に座って箸を取った。