ならばお好きにするがいい。
 
チラ、と先生を見上げたら目が合った。


先生は慌てた様子で私から視線を逸らす。


「せんせ?どしたの?」

「……なんでもねーよ」


先生は今、何を考えているんだろう。


どんな気持ちで、私の隣にいるんだろう。


気になる、すごく。


私は先生のことが大好きで、大好きで。この気持ちは一生消えることなんてないって、自信を持って言える。


先生はどうなんだろう。


先生は、私のこと、どんな風に想ってるんだろう。


やっぱり“生徒”?


でも、数日前のあの夜のこと。おでこに優しいキスをくれたことを思い出すと、どうしても期待しちゃうんだ。


「ねぇ、先生」

「なんだ」

「私のこと、好き?」

「俺は自分の生徒は全員好きだ」


“先生”としての模範回答。


違うよ先生、そういうことじゃなくて。


「先生、私が訊いてるのは……───」

「結城」


言いかけたわがままな質問は、少し低くて、少しかすれた優しい声に、優しく遮られてしまった。


「……花火、綺麗だな」


申し訳なさそうに、柔らかく微笑んだ先生に見つめられたら、もうそれ以上何も言えなくなる。


「全て察している、何も言うな」 目がそう言ってる。


「……ごめんなさい」


謝った私の頭を、先生の大きな手が優しく撫でた。



……分かってる。


今の関係がギリギリだってことくらい。


“先生”と“生徒”、この関係を崩しちゃだめだってことも、ちゃんと分かってるの。


でも……でも……。


先生のことが、大好きで、大好きで、大好きで、大好きで……もう、止まらないんだ。



「先生、好き」

「……あぁ」



咲いたばかりの花火がきらきらして。それから、私たちはどちらから口を開くこともなく、黙って花火が散っていくのを見つめていた。




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