ならばお好きにするがいい。
「側にいてやる」
ベッドに残っていた色素の薄い長い髪の毛。それが、昨日までアイツがここに寝ていたという事実を、生々しく物語っている。
ベッドに潜り込めば、ほのかに鼻をくすぐる甘い匂い。
結城の匂い。
「……」
隣にアイツが寝ていないベッドは、なんだか異様に広く感じて落ち着かない。無意識のうちに、ベッドの端に寄っている自分に気付いて苦笑する。
電気を消して、目を瞑ってみても、なかなか寝付けない。
それもそうだ。
なんたって昨日まで、「先生、子守唄歌って」だとか「先生、昔ばなしして」だとか、奴が眠るまで隣でピーピー騒がれてたんだからな。こんなに静かじゃ、逆に寝れねぇ。
隣に誰もいないことが当たり前だったのに、たった数日で、隣にアイツが寝ていることが当たり前になってしまった。
「アイツ……もう寝たかな」
ぼんやりと薄目を開けて、暗い天井を見つめていたら、さっきまでの出来事が次々に思い出された。