ならばお好きにするがいい。
きっかけはただの夏風邪。
それがまさか、あんな事態を招くなんて。考えてもみなかった。
あの日、高熱のため外に出られる状態ではなかった俺は、不本意ではあったが、樫芝に救援を依頼した。
“薬と、何か元気のでるもの”を持ってこいと頼んだ結果、何故か薬と一緒に付いてきた結城。
そいつは元気のでるものじゃなくて、元気なものだろーが。
そんな俺のツッコミなんてお構い無しに、ズカズカ人の部屋に上がり込む奴らを阻止する体力は、残念ながら風邪に憑かれた俺には無くて。観念して、言われるがままに飲み物を出した。一刻も早く奴らを帰して、さっさと薬を飲んで寝たかった。
その前にまず、何故結城を連れてきたのか、その問に対する樫芝の回答が意味不明で。真剣に尋ねたにもかかわらず、ふざけた回答が返ってきたことに腹が立った。
……まぁ、今になって思えば、ふざけたわけではなかったんだろうけどな。あいつは普通にしててもふざけた奴だし。
しかしあの時は高熱のせいか、頭に血が昇るのが早かった。
怒りで沸き上がった血液は、もの凄い勢いで頭の中を循環して。ぐらり、風呂上がりのような、鈍い目眩に襲われたかと思ったら、次の瞬間、世界が揺れた。