ならばお好きにするがいい。
樫芝先生は「分かった分かった」と観念したように再び椅子に腰掛けた。
「で?今度はなーに言われたんだ?」
「次の小テストで60点以下だったら二度と口きいてくれないって……」
「ふーん……?でもま!60点くらいならなんとかなるんじゃない?」
「……私の今までの小テストの平均点19点」
「あー……ならないかもね」
樫芝先生は教科書と一緒に開かれている私のノートを覗き込んだ。
そして私の解答に一通り目を通すと、苦笑しながらチラッと私を見た。
「ねぇあのさ、コレ全部間違ってるよ?」
「えええッ!?うそ!!」
「いやホント」
樫芝先生は私のペンケースから赤ペンを取り出して、私の解答の隣に自分の解答を作り始めた。
黙々と問題を解いていく樫芝先生に嫉妬する。
数学出来ないとか言ってたくせにスラスラ解けてるじゃん……。
「はい、おしまい」
「ぜ……全問正解……」
樫芝先生の解答と教科書の解答を見比べると一字一句同じことが書かれていた……けど……。
「全然理解できないよおおぉ」
「えー!?俺頑張ったのに!こんなに分かりやすく丁寧に解答作ってあげたのに!それでも理解できないのか!?」
樫芝先生は「うーん……」と頭を抱えて私に向き直った。
「まず、この二つの直線の方程式を連立させるのね。んでこの式にこの式を代入して……こうしてこうすると共有点の座標が……」
樫芝先生は一生懸命教えてくれたけど、やっぱりちんぷんかんぷんで。
「あ……やっぱりダメ?」
「ごめんなさい……」
「んー……参ったなこりゃ」
樫芝先生は赤ペンをカチカチノックしながら頬杖をついた。
「うーん……やっぱこーゆーのは担当のセンセーに教えてもらうのが一番なんだけどねぇ……」