ならばお好きにするがいい。
激しい頭痛に侵されながら、俺の意識は薄れていった。誰か(多分樫芝だろうが)に抱えられてベッドに運ばれ、押し込むように薬を飲まされたのは、なんとなく覚えている。
そして眠気に襲われて、襲われるがままに深い眠りに落ちた。
どれくらい寝たのかは覚えてないが、誰かの気配を感じて重い瞼を持ち上げた時、薄目を開けて窓の方に目をやると、外は既に真っ暗だった。
「あ、起きちゃった」
気配の原因を見つけた瞬間、同時に頭の中に広がった疑問符。
俺はその疑問を素直に口にしてみた。
「何してんだ……お前……」
結城に尋ねたというよりは、自問自答に近かった。ぼんやりする頭で、時間を遡って、状況を整理した。
風邪を引いて、樫芝に薬頼んで、そしたら何故か結城までついてきて、飲み物要求されて、それから……。
その先の記憶が無かったため、とりあえず率直な質問を結城に投げかけた。
「樫芝はどうした」
「帰りました」
即答。しかも一番聞きたくない答えが返ってきた。
「お前も一緒に帰れよ。なんで残ってんだよお前」
そう言った俺に、あたかも当然の顔で、結城は答えた。
「だって二人とも帰っちゃったら誰が先生のこと看病するんですか?」
看病って……。
渡されたペットボトルの水に口を付けながら、思わず苦笑を浮かべていた。
色々と腑に落ちないところもあるが、まあ……コイツも悪気があって来たわけじゃねえしな……。仕方ねぇ、今回ばかりは多目に見るか。
そう思い、出来る限り柔らかく結城に帰るように促した……が。
「何言ってるの先生、帰らないよ私」
大きな瞳を揺らして、不思議そうに首を傾げた結城。
数日ぶりに間近で見たアイツの顔に、思わずドクリと胸が脈打ったのは、きっと悪い風邪のせいだったに違いない。