ならばお好きにするがいい。
……ン!?
「今、なんて……?」
「え?いやだから、担当のセンセーに教えてもらうのが一番だと……」
「そっかあああああ!!!!」
私は勢い良く椅子から立ち上がって、急いで教科書とノートを抱えた。
「ありがとう樫芝先生!」
「?……あぁ、ナルホド、そーゆーことね。いってらっしゃい」
「いってきますっ!」
私は先生に向かって、一度大きくおじぎをした。
そしてヒラヒラと手を振った樫芝先生に送り出されるように、鉄砲玉のごとく図書室を飛び出した。
職員室にはいなかった。
教室にも、他のクラスにもいなかった。
「もしかして……!」
私の頭の中にふっ、と思い浮かんだ“あの場所”。
何の根拠も無いのに、私はその場所へと走った。
あの廊下の突き当たりを、右に曲がれば……。
やっぱり、いた……!
「───お、小田切先生ッ……!」
大きな声で名前を呼ぶと、ゆっくりとこっちに振り向いた彼。
「……廊下は静かに歩け、バカ」
私の大好きな声が、静かな廊下に低く響き渡る。
先生はやっぱり、美術室前の廊下で絵を見ていた。
あの日と同じように、廊下には眩しい夕日が射し込んでいて。
オレンジ色に染まった廊下には、背筋の伸びた凛とした影が、ひとつだけ伸びていた。