ならばお好きにするがいい。
 
小田切先生に支えられて立っている今の状況に、心の中で動転する。


ぴたりとくっついた身体と身体。


胸いっぱいに感じる先生の匂い。


心臓の鼓動だけが加速して、そのスピードに頭が追いつかない。


「前見て進むのは一向に構わねーが、たまには足下も見ろよ……」


心臓の音がうるさくて、先生の声がよく聞こえない。


「おい、結城……?」



……あれ?



身体を離そうと……先生から離れようとしているのに、身体が言うことを聞かない。


まるで魔法でもかけられたかのように、私の身体は先生の身体にぴたりと張り付いたまま動かなかった。



「……」



そんな私の身体を、無理矢理引き剥がすのかと思いきや、先生は私を胸の上に置いてくれたまま動かない。


私のほっぺが、調度先生の心臓の位置に当たる。


トク、トク、トク……一定の間隔を刻んで脈打っている先生の心臓。


「……」


抱きついているわけでも、抱き締められているわけでもなく、ただ、身体をくっ付け合っているだけ。


変な状況。


でも、熱い感情が、胸のどんどん湧き上がってくる。


……好き。



せんせ、好き。




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