ならばお好きにするがいい。
ココア
「あんた帰ったら?」
聡未が心配そうな顔で私の顔を覗き込む。
「……大丈夫」
「って顔してないでしょーが」
あれから一週間。
ついに運命のテストの日がやってきた。
……と思いきや、なんと風邪まで一緒にやってた。
今朝起きたら、石みたいに体が重くて、熱を計ってみたら37.5℃。
まぁ、ギリギリ大丈夫かな~と思って登校してみたものの……。
「……大丈夫、だけど死にそう」
「後半が本音だろ」
時間が経つにつれて体はどんどんだるさを増して、おまけに頭は痛いし寒気はするし。
「う~……最悪。なんでよりによって今日なの~……風邪の意地悪~……」
「知恵熱でしょ。急に慣れない勉強するからよ」
正直、すごく帰りたい。
お薬のんでお布団にくるまって横になりたい。
でも……。
「60点取るまで帰れないよぅ……」
今ここで帰ったらテスト0点になっちゃうもん……。
それに、テストが嫌で逃げたって思われるかもしれないし……それだけは絶対絶対絶対イヤだし……。
「……数学って確か次の時間よね」
「うん」
「じゃあテストだけ受けて、終わったらすぐ保健室行って寝てな。授業終わったら、私があんたの荷物まとめて届けてあげる。先生には説明しておいてあげるから、今日は早退しなよ」
「ん」
聡未はふーっと長い息を吐いてから、「頑張りな」って私の肩をポンと優しく叩いた。
「聡未」
自分の席に戻ろうとした聡未の制服の袖を引っ張る。
「ん?」
「ありがと」
私がそう言うと、聡未は一瞬目を見開いてから、すぐにニコッと笑顔を浮かべた。
それから、始業の鐘が鳴るのと同時にガラッと教室の扉が開いて、いつも通りスーツ姿の小田切先生が教室に入ってきた。