ならばお好きにするがいい。
ひら、目の前に突き出された一枚の紙。
「なに……これ」
赤色のペンで、右上に大きく60って書いてある。
これって……。
「取れたじゃねえか、60点」
小田切先生が、私の頭をポンと軽く撫でながら、ふっと微笑んだ。
「うそ……なんで……?」
「知らねーよ俺に訊くな。俺はただ机の上にあったお前の回答用紙を採点しただけだ」
何度も見直したけど、その答案は確かに私の字で書かれていて。
「まぁ……頑張ったな」
そんな風に、先生が優しく褒めてくれるものだから……。
「……う」
ぽろ、と目から熱い涙が零れた。
「バカ、なんで泣くんだ」
「だってぇ~……」
先生はスーツのポケットから深い青色のハンカチを取り出すと、涙で濡れた私のほっぺにそっと当てた。
「先生に口きいてもらえなくなるんじゃないかってずっと不安だったから……」
「……」
「せんせ……私、これからも話しかけていいんだよね……?」
そう尋ねると、先生は呆れたように、でもすごく優しい目で私を見つめた。
「……好きにしろ」