ならばお好きにするがいい。
「先生の車、おっきーね」
ぴかぴかに磨かれた、大きなシルバーの車。
私は車に詳しくないからこの車の名前すら知らないけど、高い車だってことはなんとなく分かった。
「まぁな。いいから早く乗れ」
先生が助手席のドアを開けてくれる。
そんな先生の優しさに、また胸がきゅんと痛む。
「先生、素敵。紳士だね」
「普通だろ。つーかいちいち褒めるな鬱陶しい」
先生はトランクに私の荷物を乗せてから、運転席に乗り込んだ。
「わーい!助手席ー!」
「……」
「ねぇ、せんせ!」
「……」
「この助手席に今まで何人の女を乗せましたか!」
「……」
「ならこれからこの助手席は私だけの特等席に……」
「いい加減うっせえぞバカ!!!!黙って乗ってろ!!それ以上喋ったら走行中に窓から放り投げてやるからな!!」
嬉しくて思わずはしゃいでいたら、先生に思いきり怒鳴られた。
本当はもっと喋りたいけど、さすがに窓から放り投げられるのは嫌だから黙ることにした。
黙ーって、先生を観察する。
ハンドルを握るごつごつした大きな手、綺麗な凸を描く喉仏のライン、形の良い鷲鼻、艶のある黒い髪、鋭い眼光……。
どこをどこから見てもかっこいい。
かっこいい、かっこいい、かっこいい……。
「……おい」
「……あい?」
「……見すぎだ、バカ」
先生が大きな左手を伸ばして、私の目を覆った。
「やーめーてー」
「こっちのセリフだ。人のことジロジロ見やがって、気ィ散るだろーが」
「照れたの?」
「バカ言え、照れてねーよ。照れてねー……照れてねーけどこっち見んな」