ならばお好きにするがいい。
視界が真っ暗。
視覚を封じられると、他の感覚がいつもより敏感に研ぎ澄まされるもの。
顔に当てられた先生の手の肌合いに、全ての意識が集中する。
肌に染み込む先生の手の温もりに、ふる、と心が震えた。
「……なんか熱上がってねーか?」
先生は私の目を覆っていた手をおでこに移して、それから自分のおでこに当てた。
すると、先生の顔にうっすら浮かんだ苦笑い。
「おいおい……。お前の頭ん中、マグマでも詰まってんのか?」
先生は「やべーな……」って呟いてから、スーツの上着を脱いで私の体にかけた。
「せ、んせー……?」
「それかぶって寝てろ。着いたら起こしてやる」
「せ……」
「喋んな」
「熱が上がったのは、先生と一緒にいるからだよ」なんて切り返す余裕もなくなるくらいに、だんだんぶり返してきた激しい頭痛。
寒気を感じて、先生にかけてもらったスーツを頭からすっぽりかぶる。
その瞬間、先生の匂いにふわり、包まれて、それだけで不思議と安心した気持ちになって、嫌な寒気もピタリと止んだ。
「せんせ……ありがと」
ぽつり、少しだけ開けた口からこぼれた心の声。
「……あぁ」
頭の上から降ってきた先生の優しい声を、どこか遠くの音のように聞きながら、私はゆっくり目を閉じた。