ならばお好きにするがいい。
「あ、そうだ!先生に渡したいものがあったの!」
私は鞄から一枚のクリアファイルを取り出して先生に渡した。
先生はファイルに視線を落とすと、驚いたように目を見開いた。
「あげるっ!」
クリアファイルに大切に挟んでおいたのは、一枚の絵。
「あのね、ここ最近小テストのために夜勉強してたから、絵描く時間があんまりなくって……。だから一枚だけなんだけど……」
途中、先生の手が伸びてきて、思わず言葉の続きを呑み込んだ。
「せん、せ……」
ふわり、私の頭に優しく乗せられた大きな手。
緩やかに私の頭を撫でる手つきは、どこまでも優しくて柔らかで。
「……やっぱり上手いな、お前は」
ゆっくり顔を上げたら、先生の慈しむような眼差しがあって、そのあまりに優しい瞳に吸い込まれそうになった。
「えへへ……」
「……なにニヤニヤしてんだよ」
「だって、やっと先生がまた褒めてくれたから」
「うるせぇ、褒めてねぇ、ただ俺は感想を述べただけだ」
頭を撫でていた手におでこを軽く弾かれたけれど、私の口元は緩んだままだった。
「ほら、さっさと家ん中入れ」
「はいはーい」
「返事は一回。つーかお前60点ぽっちで調子乗んなよ。あの小テスト平均75点だからな。これからもっと厳しく数学叩き込んでやるから、それに備えて今のうち休んどけ」
結局、最後は意地悪な捨て台詞を吐いた先生だけど、さりげなく私が家に入るまで見届けてくれていたこと、私知ってるよ。
「先生、大好き」
もらったココアを枕元に置いて、まだドキドキと高鳴る胸を押さえながら、私はベッドに潜って目を瞑った。
もちろん、首にネギを巻いておでこにコンニャクを乗せて。