ならばお好きにするがいい。
「俺はな……」
ワントーン低い声に、ビクリと身体がすくんだ。
「こんな絵描く奴の顔が見てみたい。風景画ってテーマ丸無視して何でヒマワリなんて描いてんだ」……って、こんな具合に悪く言われるんだと思った。
なのに……。
「すげェいいと思う」
私の予想をあっさりとくつがえして、先生はハッキリとそう言った。
「スゲー……イイ……?」
「あぁ。このヒマワリ見てると、なんだか元気になる」
先生はそっとヒマワリの花びらに触れながら、再び私の方を向いた。
「……お前はどう思う?」
相変わらず無表情のままだったけど、もう怖くなかった。
さっきは慌てて隠した名札を、今度は慌てて先生の前に突き出す。
「先生、見て!」
胸元の名札に書かれた名前と、絵の下に貼られている名前とを見比べて、先生は目を丸くした。
「この絵……お前が描いたの?」
「うんっ!そう!」
「……へぇ」
先生はしばらく絵を見つめてから、私の胸元に目を落とした。
「結城 莉華(ユウキ リカ)……」
名札に書かれている名前を小さく声に出した後に、先生は大きな手を私の頭の上にポン、と乗せた。
「お前は天才か」
ふ、と細められた目。
緩んだ口元。
さっきまでの尖った表情が嘘みたいに、柔らかい笑顔。