ならばお好きにするがいい。
「……ごめんなさい」
沈黙を破ったのは、今にも消えてしまいそうな結城の細い声。
……このバカ。
どんだけ素直なんだよ、お前は。
そんなにすんなり謝んじゃねーよ。
かけてやる言葉を必死に考えてた俺が馬鹿みてぇだろーが。
「ほらみろ、騒ぐからまた熱上がっちまったじゃねーか」
熱い額に優しく手を添えてやれば、小さな肩がぴくっと揺れて。
こぼれ落ちそうな瞳が、おずおずと上目遣いに俺の顔を覗き込む。
そんな目に見つめられてしまえば、さすがの俺でもたじろいじまうわけで。
「……今日は帰ってゆっくり休め」
自分でも驚くくらい優しい声が出た。
自分で驚くくらいだ、まして結城にとってみれば相当衝撃的だったんだろう。
目と口をポカンと開けて、すっとんきょうな表情で俺を見上げている。
「んだよ……こっち見んな」
ゴホンと一つ咳払いをして、俺は窓の外に視線を逸らす。
「んなフラフラした姿なんて、危なっかしくて見てらんねーんだよ。お前なんてただでさえ危なっかしいってのに……」
ほとんど照れ隠しのために取って付けた当て擦りは、俺の優しい声の余韻に浸っていたこいつには聞こえなかったようだ。
嬉しそうに笑みを浮かべている姿を見たら、こっちまで口元が緩むからいけねぇ。