ならばお好きにするがいい。
はー……と長く息を吐いてから、俺は車のエンジンをかけた。
「なんだ……なんか色々面倒なことになってきやがったな……」
俺は普通に仕事がしてぇんだが……。
普通に無難な授業をして、普通に妥当な生徒の進路について考えて、普通に、普通に……。
今までずっとそうしてやってきた。
あんまり生徒に深入りしねぇように……。
面倒事は起こさねぇように……。
なのに……。
結城……。
お前のおかげで、それ全部ぶっ壊されそうだ。
「……厄介な仔犬に懐かれちまったもんだな」
窓越しに見える、夜空にぽっかりと浮かんだ月は三日月で、まるで俺を見て微笑んでいる口のような形をしていた。