ならばお好きにするがいい。
 
な……ななな……なんなんだああああ、この態度は!


「ヒドイよ先生!可愛い結城がせっかくこんなに丁寧にお願いしてるっていうのに!」

「あん?誰が可愛いって?」

「鬼畜!人でなし!」

「何とでも言え」


先生はわざとらしい大きな溜め息をつくと、ガタンと椅子から立ち上がった。


「待って先生!」

「しつけぇぞコラ!」

「先生ドッジボール得意でしょ!?」

「どこ情報だそりゃ、出任せ言ってんじゃねぇよ。俺は昔っから専らの運動音痴だ、中学高校部活は囲碁部だバカヤロー」


部屋を出ていこうとする先生の腕に、私はぎゅっとしがみついた。


「私は……!先生と、クラスのみんながもっと、仲良くなったらいいなって……小田切先生はすごく良い先生なんだってこと、みんなに分かって欲しくて……!だから、先生にも参加して欲しいって思ったの!」



これが本音。


小田切先生は、どこか私たち生徒と一線置いてるところがある。


必要最低限、そんな言葉がぴったりな先生と生徒の関係。


あまりに業務的に関係を処理するものだから、自然とみんなも先生と距離を置くようになる。


いつも遠くから無表情で私たちを眺めている小田切先生。


そんな先生を見て、みんなが『冷たい』とか『鬼』とか言う度に、私はとても嫌な気分になるんだ。


……本当はそんなことないのに、って。


私は知ってるもん。


小田切先生は本当は凄く優しくて、面白くて、頼りになって、他のどんな先生より素敵な先生だってこと。


みんな、先生のこと誤解してる。


本当の先生を知ったら、『冷たい』とか『鬼』だなんて言えなくなるよ。


こんなに素敵な先生が生徒から嫌われるなんて、そんなの絶対あっちゃいけないことだと思う。


だから、この体育祭を通じて、本当の先生をみんなに知ってもらいたいと思った。


みんなにも、小田切先生のことを大好きになってもらいたいと思った。




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