ならばお好きにするがいい。
「あ……」
その途中、廊下の真ん中で、私は思わず足を止めた。
向こうから、こっちに向かって歩いてくる人影。
その影はだんだん近付いてきて、私の前でぴたりと立ち止まった。
「……どうした、その顔」
これはとても不思議なもので、会いたくないと思えば思っている時ほど、その相手にばったり遭遇したりする。
私が今一番会いたくない人。
……小田切先生。
「おい、エライことになってんぞ」
「……心配なんかしてもらわなくて結構です」
「先生には関係ないでしょ、ほっといて」 ぷいっと私が顔を背けると、先生は呆れたような溜め息をこぼして、それからふんっと鼻を鳴らした。
「自惚れんな、誰も心配なんざしてねぇよ」
先生はそれだけ言うと、私の横をすり抜けて、すたすたと歩いていってしまった。
振り返って、だんだん小さくなる先生の後ろ姿を見つめる。
「……先生のバカ」
誰にも聞こえないくらいの声で溜め息混じりに呟いて、私は小さく肩を落とした。