ならばお好きにするがいい。
 
あの日以来、私は先生とほとんど口をきいていない。



朝、校門でこっそり待ち伏せして先生に一番最初に挨拶することも、休み時間、先生を探して走り回ることも、放課後、教科書を抱えて先生に勉強を教えてもらいにいくことも、ここ最近、もはやほとんど習慣になっていたこと全部、私はするのをやめた。



怒ってること、気付いて欲しかった。


「あーもう分かった分かった。俺が悪かったから、機嫌直せ」って、あの呆れたような優しい目をして言って欲しかった。



なのに。


私の都合のいい想像はあっさりと打ち砕かれた。



先生は相変わらずいつも通りで。


私が話しかけようがかけまいが変わらない、むしろ、まとわりついてくる邪魔がいなくなって清々した、って感じすらする。


そんな様子に、また胸がもやもやして。



「先生のバカ……私も、バカ……」



先生の言う通り、私は本当にバカで子供っぽい。


拗ねて先生の気を引こうとするなんて、幼稚園児みたいだ。


でも、仕方ないじゃん。


私が一方的に怒って暴れてふて腐れてる……と言われてしまえばおしまいだけど、やっぱりあの先生の態度にはどうしても納得できないんだもん。





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