ならばお好きにするがいい。
 
次の日の放課後、練習に出る気がどうしても向かなかった私は、一人図書室にいた。


静かな図書室は、考え事をするのにはもってこいの場所だから。



「なーにしてーんの?」



机に突っ伏していたら、不意に後ろから肩を叩かれ、私はゆっくり顔を上げて振り返った。


「……樫芝先生……」

「よっ」

「……こんにちは」

「あらら、どした?元気ないな」


樫芝先生は私の隣の椅子を引いて腰を下ろした。


「……樫芝先生、今日は練習いかないの?」

「ウン、だって今日会議あるんだもん。ほんとは会議なんかよりドッジボールしてたいんだけどね~あはは」

「……」


そう言って笑う樫芝先生を見ていたら、まるで鉛を飲み込んだように心が重く沈んだ。



いいなぁ、樫芝先生は……小田切先生と違って。



そんなことを考えて、すぐに自己嫌悪。


「……で?莉華は練習いかないの?お前毎日放課後頑張ってたじゃない」


「実は毎日こっそり遠くから応援してたんだよ」 そんなこと言われて、おまけにそんなに優しく笑いかけられたら、どうしようもなく泣きたくなる。


「樫芝、せんせ……」

「ん?」

「……私も樫芝先生のクラスになりたかった」


小さく呟いたその言葉に、樫芝先生は少しだけ目を丸くした。


「……なーに、また雅人にいじめられたの?」


樫芝先生は私の頭をぽんぽんと優しく撫でながら、小さく首を傾げた。


「樫芝せん……せ」


鼻の奥に、ツンとした痛みを感じた。


直後に、ぽろ、と目から大粒の涙が一つこぼれ落ちて。


するとせきを切ったかのように、涙がぽろぽろと止めどなく流れ始めた。


「樫芝先生……どうしよ」

「ん?」

「私……このままじゃ小田切先生のこと嫌いになっちゃうよ……」






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