ならばお好きにするがいい。
私はここ最近の出来事を樫芝先生に話した。
体育祭を通して、小田切先生とクラスのみんなが仲良くなれたらいいなって思ったこと、なのに小田切先生が体育祭に無関心なこと、そのせいで喧嘩して悲しくなったこと、仕方ないから小田切先生無しで頑張ろうとしたけど、クラスの団結力は最悪で、まともに練習すら出来ないこと、楽しみだった体育祭が、今では全然楽しみじゃないこと……。
樫芝先生は私の頭を撫でたまま、黙って耳を傾けてくれた。
私が話し終えると、樫芝先生はふぅ、と呆れたように溜め息をついた。
「んー……そりゃヒドイ。あいつそんなこと言ったの?」
「うん。それに『俺は中学高校ずっと囲碁部の運動音痴だから、ドッジボールなんて出来ない』って……」
「囲碁部ぅ!?」
樫芝先生は「んー……」と小さく唸ってしばらく何かを考え込むと、何か思い付いたのか、それから私に向き直ってにっこり笑った。
「ねぇ莉華、明日の放課後、うちのクラスと練習試合しない?」
「え?あぁ、はいはい練習試合ね、練習試合……って、ぇえぇええぇえぇええ!?何言ってるの樫芝先生!今の私の話聞いてました!?私のクラス今ほとんど崩壊状態で試合なんて出来る状況じゃ……」
「ウン?でもいいじゃん、やろやろ」
いいじゃんって……いいわけないじゃん。私のクラスが負けるに決まってるじゃん。
にこにこ笑っている樫芝先生の頭の中が理解不能。
返答に困って黙っていると、樫芝先生が挑発的に口角を上げた。
「まさか断ったりしないよね?こないだ『私がいれば百人力ー!』とか叫んでたの聞こえたんだけど。あれは虚勢だったんですか、体育祭実行委員長様?」
カチ───ン。
「そっ……そんなわけないもん!本当だもん!樫芝先生のクラスなんて私一人でこてんぱんにできちゃうんだから!」
「へー」
「いいよ!明日ね、明日の放課後ね!私を馬鹿にしたこと後悔するがいい!」
私はガタンと荒々しく席を立って、図書室を飛び出した。