ならばお好きにするがいい。
 
「いや、無理でしょ」


聡未が苦笑を浮かべる隣で、私はグイッとジャージの袖を捲り上げた。


「なにが無理なものか!諦めたらそこで試合終了ですよ!」

「他所様の名ゼリフ拝借してかっこつけてんじゃねーよ。つーかこんなの始まる前から終了してるじゃん、勝機ゼロじゃん、馬鹿なのあんた?」


約束の放課後。


とりあえず、まだやる気のあるクラスメートを誘って試合に挑むことにした。


「結城!頑張ろーぜ!」

「おう!ぼこぼこじゃ!」

「何がぼこぼこか。お前らが今からぼこぼこにされようとしていることに気付け」


結局集まったのは、私と(無理矢理連れてきた)聡未と男子5人の計7人。


対して樫芝先生のクラスは……。


「おー。気合い入ってんね」

「むッ!樫芝先生!」


私たちが7人なのにも関わらず、約20人。しかもほとんど男子。完全に勝ちにきている。


「ま!練習試合といえど試合は試合だからねー。俺たちも本気でいくよ」

「ちょ、待って!え、もしかして樫芝先生もやるの?」

「あったりまえ。俺がいて初めて俺のクラスだからね。俺が欠けたらこのクラスはまとまらないのよ」


……小田切先生の口からは絶対出ないセリフ。


いいなぁ……樫芝先生って……。


「莉華!ちょっと莉華!なにボーッとしてるのよ!」

「え?」

「あっち20人もいるのよ!?その上樫芝先生まで!一体どうやって勝つっていうのよ!ぼこぼこにされて恥じかくだけじゃない!」

「分かった!じゃあ聡未は外野ね!」

「人の話を聞け」


ぎゃーぎゃー怒鳴る聡未を無視して、私はコートに駆け込んだ。



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