ならばお好きにするがいい。
 
「あーあ、負けちゃったー。ていうか途中から飛び入り参加って反則じゃないの~?」


からかうような口調で近付いてきた樫芝先生が、私の肩にトン、と手を置いた。


「樫芝先生……」

「ん?」

「ありがとうございました」



私が頭を下げると、樫芝先生は「良かったね」って微笑んだ。



「それにしてもびっくりしました。小田切先生、囲碁部で運動音痴とか言ってたのに……運動神経抜群……」

「あぁ、それね。嘘だよ」

「へ?」

「雅人は中学も高校も野球部でピッチャー。かなり上手かったみたいで、プロからのスカウトもあったらしーよ」

「え……ぇええぇぇええぇッ!?」

「ていうかオセロもまともに出来ない奴が碁なんて打てるわけないじゃん」


樫芝先生は呆れたように笑うと、私の頭をぽんぽんと撫でた。


すると、少し怖い顔をした小田切先生がこっちに近付いてきて。


それを見た樫芝先生はくすりと笑った。


「愛されてるね」

「え?」


「じゃ、俺のクラスも練習し直さなきゃ」 意味深な言葉を残して、樫芝先生は自分のクラスの元へ戻っていった。




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