ならばお好きにするがいい。
「痛い!先生のバカ!おでこヘコんだ!」
「ヘコんだのは俺の方だ。お前また俺の職員室の机にいたずらしたろ」
「してません!あれはいたずらじゃなくてアートです!」
「したんじゃねーか、アートという名のいたずらを」
先生はわざとらしく大きなため息をつきながら、呆れたような表情で私を見た。
「お前な、いい加減毎日毎日俺の机にベタベタ絵貼るのやめろ。俺の机は壁じゃない」
「異議ありっ!絵は壁だけに貼るものじゃありませんっ!」
「異議あり。机は絵を貼る場所ではありません」
「異議ありっ!」
「却下」
先生はそうピシャリと言い放つと、大きな手で私の口を塞いだ。
「ったく……あの絵の山片付けるのに、俺がどれだけ苦労してると思ってんだ……。いいか、今度また俺の机を紙で埋め尽くすようなことがあれば、お前の今期の成績に響くと思え」
「……先生の手、あったかい」
「お前はそんなに俺を怒らせてェのか」
先生がコチンと私の頭を小突いた。
……全然痛くない。
むしろ叩かれた部分から“好き”って気持ちが全身に広がっていく。
「だって、先生に褒めて欲しかったんだもん」
ぽつりとこぼした本音。
先生の顔を覗き込んだら、ぷいっとそっぽを向かれた。
なんとなく、先生の耳が赤く染まっているように見えたのは気のせいかな。
先生は教室を覗き込んで聡未を呼んだ。
「笹原(ササハラ)、こいつが馬鹿なことしないように見張っといてくれ」
「はーい」
聡未が面倒臭そうに返事をすると、先生は私に「バカ」とだけ言い残して行ってしまった。