ならばお好きにするがいい。
ボールを片付けに体育倉庫へいくと言った小田切先生の後ろを、私はアヒルの子供みたいに追いかけた。
「ついてこなくていいっつーのに……」なんて、先生はため息を漏らしたけど、そんなの無視無視。
「……なんだこりゃ」
倉庫に足を踏み入れた瞬間、先生は眉をしかめて、鬼のような形相で倉庫内をぐるりと見渡した。
「なんでこんなに汚ねーんだ?」
「えっと、わ……私に訊かれましても……」
「あん!?お前体育祭実行委員長だろーが!関係ねーわけねーだろ!」
確かに、改めて見ると倉庫内の状態は酷かった。
あちこちに散らかったカラーコーンやボールやラケット、棚からおばけみたいに垂れ下がる球技用のネット、将棋倒しになったハードル……とにかく汚い。
先生は足元に転がっていた空気の抜けたボールを拾い上げると、私の方に振り返った。
「……結城、片付けるぞ。手伝え」
「あいっ!」
私は先生の後に続いて、倉庫の片付けを開始した。
体育器具が乱暴に積み上げられた棚を無言できびきびと整理していく先生。
あんなに汚かった棚の中が、あっという間に綺麗になっていく。
「……つーか体育倉庫の管理って樫芝が担当だよな。これはガツンと言ってやんねーとダメだ。明日の職員会議でチクッてやる」
「えー、先生人間ちっちゃい」
「うるせーよ。大体お前だって嫌だろ、掃除当番でもねーのに倉庫掃除なんて」
「私はいやじゃないです」
「ほォ……掃除が好きとは感心だな」
「え?ちがうちがう。掃除が好きなんじゃなくて先生が好きなの!だから先生と一緒なら掃除だって楽しいですっ」
そう言って先生の方を見たら、プイッとそっぽを向いた先生に、「ばーか」って言われた。