ならばお好きにするがいい。
 
そう言うと、先生は棚から適当に丸められてよれよれになったバドミントンのネットを取って、丁寧に畳み始めた。


「じゃあ、どうして先生は倉庫掃除するの?」


倉庫の掃除をしても、先生の得になることなんて一つも無いはずなのに。


「どうしてって……変なこと訊くんだな。そんなの決まってんじゃねーか」


先生は綺麗に畳み終えたネットを棚に戻すと、長い息を吐いた。



「綺麗な方が、お前ら使いやすいだろ」



あぁ、やっぱり。


やっぱり、先生は素敵な先生だ。


今のセリフ、先生は狙って言ったわけじゃない。


優しい表情から、優しい声から、本心からの言葉だって分かる。


なんだかんだ言って、先生はちゃんと生徒のことを考えてくれてるんだ。



「さて……だいぶ綺麗になったし、そろそろ終了だな。お疲れさん、付き合わせて悪かったな」

「ううん。いいの、得たものあったから」

「あ?」


また一つ、先生のことが大好きになる思い出が増えた。


これは大収穫。




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