ならばお好きにするがいい。
「ところで先生、なんであんなにタイミング良く試合に乱入してきたんですか?
もしかして、やっぱり私のことが心配で心配で心配でいたたまれなくなってずっと監視してたとか……」
「勝手な妄想なら一人の時にこっそりやれドアホ。
たまたま通りかかったんだよ。そしたらお前らがドッジボールしてたもんだから、たまには体動かすのも悪かねーかなと思っただけで……」
「校庭ってたまたま通りかかるものなんですか?」
「通りかかるもんだろ。ほら、あの、アレだ……花壇に水やったりとか、除草剤撒いたりとか、蜂の巣駆除したりとか、地雷除去したりとか……と、とにかく色々することあんだよ」
「それ校務員さんの仕事じゃ……ていうか最後のに至っては自衛隊の仕事……」
「うるせーな!するんだよ!今の数学教師は蜂の巣の駆除も地雷の除去もすることになってんだよ!」
「そうなの!?」
し……知らなかった……!
お、小田切先生ってすごいんだね……。
「……って、あれ?なんの話してたんだっけ」
「……あれだろ、オオスズメバチの毒針の構造と刺されないための注意点についてだろ」
「そうだっけ?」
「そうだ」
「うーん?そっか」
上手く話を逸らされた気もするけど、何の話をしていたか忘れた私は、それからしばらく言われるがままにオオスズメバチについて先生と語らった。
すると、遠くから下校時間を知らせる鐘の音が聞こえてきて。
先生と私は、慌てて体育倉庫を飛び出した。