ならばお好きにするがいい。
「まぁ確かに、これを着るのは相当久しぶりだな」
そう呟きながら、小田切先生はジャージの袖をグイッと捲り上げる。
露になった先生の腕は、しなやかなのに筋肉質で、逞しくて男らしい。
この腕に抱き締められたらどんなに幸せだろうって、思わず想像してしまう。
シンプルなデザインの黒いジャージは、小田切先生らしいなって思った。
「それにしても、本当に雅人が体育祭に参加するなんてねぇ……」
「仕方ねえだろ。こいつがうっせーから付き合ってやってるだけだよ」
私を指差してあからさまに面倒臭そうな顔をした小田切先生に向かって、樫芝先生はにっこり笑う。
「一番張り切って練習してた人が何を言ってんの」
「な゙!?誰も張り切ってねーよ!」
「放課後になると即職員室飛び出して、いの一番にボール抱えてたのは誰だっけ?」
こめかみの青筋をぴくぴくさせて、怒りの薄ら笑いを浮かべる小田切先生。
そんな小田切先生を無視して、「お互い頑張ろうなー」って私の頭を撫でる樫芝先生は、本当に対照的。
「じゃ、またドッジボールの決勝で。途中で負けないでね」
「うるせー!その言葉そっくりそのまま返してやるよ!なぁ結城!」
「おう!返してやんよ!」
やれやれと笑いながら去っていく樫芝先生の後ろ姿を不機嫌そうに見つめる小田切先生は、負けず嫌いな子供みたいでなんだか可愛い。
小田切先生って、本当は誰よりも熱い先生なのかも。