ならばお好きにするがいい。
センセ、好き。
大好き。
「はー……莉華も物好きだよね。あんな男のどこがいいんだか」
「な゙!」
「確かにルックスはまぁまぁレベル高いけどさ。でもあれ鬼畜じゃん。なにあのポーカーフェイス、怖すぎ」
「小田切先生は鬼畜でも冷徹大魔王でも酷薄非情のサディスト星人でもないよ!」
「そこまで言ってねーよ」
「先生ほんとは優しいんだから!それに……」
笑うと、すごくかっこいいんだもん。
言いかけたその言葉を、私はそっと呑み込んだ。
先生の笑顔は私だけの宝物だから、やっぱり誰にも知られたくない。
「だって怖すぎるでしょ、あの人。あの人が担任になってから授業中寝れなくなったわ」
そう、高校2年生になった今年から、私のクラスの担任は小田切先生になった。
担任が発表されたあの瞬間、喜んでいたのは私だけで、他のクラスメートは全員顔を引きつらせていた。
みんな口を揃えて「地獄が始まる……」って言ってたけど、私にはどういう意味だかさっぱりで。
数学の授業も小田切先生が担任になってから、1年生の頃と一変して、みんな真面目に受けるようになった。
聡未には「死にたくなければ小田切の授業は真面目に受けろ。ノートに落書きはするな。居眠りなんてしたら最後、首が飛ぶからな。ズタズタにされるぞ、内申を」ってよく分からない忠告されたけど、先生に見とれてお絵描きやら居眠りなんて、そんなことする暇はない。
だからしっかり授業中は先生を見てるけど、みんなが言うような怖いことなんて何も起きない。
みんなが先生を怖いって言う理由が、私はイマイチ分からない。
まぁ確かに目つきと愛想は悪いけど……。
「あの人に気軽に絡めちゃうアンタのその性格、もはや尊敬するわ」